疾患の中には、遺伝子が原因となって発症する疾患があります。遺伝疾患は、自分自身も親や祖父母から遺伝しており、また自分の子供に疾患の遺伝子を残す可能性があります。原因が遺伝子にあるため、発症をある程度予測できる点では、発症した時の心構えがもちやすい疾患と言えるでしょう。とはいえ、遺伝疾患であるからこその悩みを抱えている患者も多くいます。具体的には、進学や就職、結婚、出産などの人生の岐路に立った時、思い悩む患者が多いです。

看護師には、遺伝疾患について正しい知識を持つことで患者に的確なアドバイスをし、患者の悩みに寄り添うという役割があります。例えば、家族性大腸腺腫症という遺伝疾患がありますが、両親のどちらかがこの疾患であれば、その子供は2分の1の確率で発症します。この疾患では、大腸にポリープが多数でき、治療をせずに年齢を重ねると大腸がんに進行することがわかっています。そのため、この疾患を持つ患者は結婚や出産をあきらめてしまう例が多いです。すでに出産を終えてから発症し、子供に遺伝しているのではないかと後悔して悩む患者の例もあります。ですが、正しい治療を行えば結婚も出産も乗り越えている患者はたくさんいます。看護師は、患者の気持ちに寄り添ったうえで、人生の選択肢を提案することが求められています。

遺伝疾患があっても豊かで望んだ未来を手に入れることができるように、看護師が寄り添いアドバイスをすることで、患者は前を向いて生きていくことができるでしょう。実際の医療現場ですぐに知識を役立てられるように、遺伝性疾患患者への看護ケアについて理解を深めておくことも大事です。